富士登山競走 山頂コース完走コンプリートガイド

富士登山競走とは、毎年7月第4週の金曜日に行われるレースです。スタートは富士吉田市役所。ゴールは五合目と、富士山頂です。

テレビ放送や、ランニング雑誌で紹介されることが増えてきて、人気が高まっています。

山頂コース完走(4時間30分)は、「市民ランナーグランドスラム」の一つとされています。かなり過酷な条件ではありますが、フルマラソンサブスリー(3時間以内)、100kmのサブ10(10時間以内)よりは、チャレンジしやすいと言われています。

とはいえ、誰でもすぐに山頂コースへ出場できるわけではありません。最短でも2シーズンをかけて、計画的に取り組んでいく一大プロジェクトなのです。

山頂完走するために知っておくべき膨大な知識を、今回は「コンプリートガイド」と称して、一記事にまとめてみました。読み通していただけば、全貌がつかめると思います。

あなたも、山頂コースを完走して、市民グランドスラムの一つを手に入れてみませんか?

【目次】
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山頂コース完走には2年かかる

ランスマの放送などを観て、富士登山競走完走を目指したいと思ったランナーは多いでしょう。しかし、いきなり山頂コースには出場できません。

まず五合目コースに出場し、2時間20分以内で完走しないと、山頂コースにエントリーできないのです。

よって、最低でも2シーズンかかるわけです。

五合目までと言えど、標高差1,500m。登りが14km続きます。かなりキツイです。

しかも、五合目コースの募集人数は1,276人。山頂コースが2,500人。合計3,776人で富士山の標高と同じ3776になるわけですが、山頂コースの人数の半分な上、五合目コースは誰でもエントリーできるため、毎年応募が殺到します。

ランネットで申し込むのですが、五合目コースは10分程度で締め切りになります。レースで完走するよりも、出場することの方が難しいと言われています。

ちなみに、山頂コースも20分ほどで締め切りとなってしまいます。

0合目関門突破 必勝法

おそらく裏技は存在しません。正攻法でいくのが一番です。

  • 大会ホームページから、予め申し込み画面を表示させておく
  • ランネットにログインをしておく
  • 時報やネット上で日本標準時(JST)を確認しながら、時間ピッタリに申し込みボタンを押す
  • あとは、何もせずひたすら待つ
  • スマホを持っているのであれば、スマホとPCの二刀流で(スマホは携帯電話の回線、PCは自宅の回線で)

もっとチャンスが欲しいという方は、ふるさと納税枠を狙う方法もあります。

50,000円を納税することになりますが、見合った稼ぎがあれば、実質2,000円負担。

エントリー費用(山頂15,000円、五合目10,000円)も含まれていて、富士吉田市の名産品をたくさん貰えるため、意外とお得です。(ただし、当選すればの話)

私は、2018年はふるさと納税枠で当選しました。2018年の倍率は約2倍だったそうです。

【参考】 抽選会 ふるさと納税出場枠100人 富士吉田 /山梨

富士登山競走山頂コース完走に必要な基礎知識

山頂コース概要

来年は五合目コースからという方も、まず最初に山頂コースの全貌について知っておきましょう。

五合目コースは山頂コースを制覇する重要なステップであることを理解しましょう。富士登山競走は2年がかりの大掛かりなプロジェクトなのです。

富士登山競走のスタート地点は富士吉田市役所前。ゴールは富士山頂です。

距離は約21km、標高差3,000mのコースを4時間半以内で登りきります。

※コースの詳細は公式ホームページに詳しく掲載されています。

五合目が大体中間地点。標高1,500mです。以前は五合目タイムの2倍が山頂ゴールタイムの目安と言われていましたが、最近は外国人登山客の増加で登山道が混んでいるため、もう少し時間がかかります。気分的には中間点で良いと思います。

そして、五合目へ向かう途中に「馬返し」という地点があります。ここから本格的な山道が始まります。昔の登山客はここまでしか馬を使えなかったそうです。

現在は馬返しまでは舗装されたロードを走ります。距離は約9km。大体1時間3分くらいだとほぼ完走できます。

もう一つ重要なのが、8合目関門。標高3,400mで、関門タイムは4時間です。

よって、

  • 馬返しまで1時間
  • 五合目まで2時間
  • 八合目まで4時間弱

と覚えておくと、レース全体の概略をつかめると思います。

馬返し&五合目タイムと完走率

重要なのが、馬返しと五合目です。なぜなら、馬返し通過タイムと、五合目通過タイムは、山頂コース完走とキレイな相関があるからです。

具体的には、馬返しを1時間3分五合目を2時間4分以内で通過できれば、90%以上の確率で完走できますが、それ以降になってしまうと、どんどん完走率が下がっていきます。

五合目コース通過が2時間10分を過ぎると、10%以下になってしまいます。

なぜかというと、富士登山競走のコース設定に理由があります。

馬返しまではロードなので、多くの人が並んで走れますが、馬返しから山に入ると、一気に山道が狭くなります。

速いタイムであれば、ランナーが少ないので走りやすいですが、タイムが遅くなってくると、ランナーが殺到。コースが渋滞して、思うように走れなくなってしまうのです。

つまり、山頂コースの完走は、五合目コースをどれだけ速く走れるかにかかっているのです。

もっというと、馬返しまでにどれだけ前を走れるかで、レースが決まってしまうといっても過言ではありません。

よって、五合目コースは山頂コースの結果を占う、超重要なレースなのです。「ギリギリ2時間20分以内に完走」みたいなことを言っているようでは、山頂は完走できません。

詳細データは、富士登山競走山頂コース 馬返し・五合目関門タイム、ゼッケン番号と完走率の相関を御覧ください。

スタートブロックと完走率

スタートゾーンは、五合目レースの持ちタイムでA、B、Cの3つのブロックに分けられます。2018年だと、1時間50分以内のランナーはA、2時間10分以内のランナーはB、それ以降はCブロックとなります。

ABCブロックで、完走率が露骨に違います。Aブロックは90%以上、Bブロックで60%、Cブロックだと10%です。

よって、BブロックのランナーはなるべくAブロックに近い位置、CブロックのランナーはBブロックに近い位置に並ぼうとするのだと思います。

しかし、これは大きな勘違い。Cブロックの最終ランナーでも、スタートロスは2分程度。スタート位置の優位性は最大2分しかありません。

ブロックが重要なのではなく、自分の走力が重要です。Aブロックのランナーは、前年までに1時間50分以内で走れた走力を持っているから、強いのです。

Bブロックでも、持ちタイムが1時間51分のランナーと、2時間9分のランナーでは20分近くの差が出てきます。当然、1時間51分のランナーは完走しやすいですし、2時間9分のランナーはキツイです。

Cブロックでも、1年間必死に練習して、走力を向上したランナーであれば、完走はできるのです。スタートがBブロックだからといって、安心しないようにしましょう。

こちらも詳細は、富士登山競走山頂コース 馬返し・五合目関門タイム、ゼッケン番号と完走率の相関を参考に。

五合目コース

五合目コースの練習方法

まず一年目は、五合目コース攻略のための練習を集中して行いましょう。

五合目コースは次第に斜度が増加して、馬返しの手前で10%くらいになります。

よって、近所で斜度15%くらい2-300mの坂を見つけて、坂ダッシュを5-7本繰り返す練習が有効です。レースまでの2ヶ月くらいで、40本ほどやりましょう。

急坂に慣れておくと、馬返し手前まで、坂をあまり感じずに走れるようになります。

馬返しからのトレイルは、こちらも近所のトレイルを走ったり、階段ダッシュが有効です。

5kgくらいを背負うと、さらに効き目があります。無理してケガをしないように注意しましょう。

富士山に行けるチャンスがあれば、実際のコースで試走をしましょう。

山頂は夏の期間しか登れませんが、五合目までなら、GWくらいから登れて、秋も9月一杯なら大丈夫でしょう。ただし、山小屋は営業していません。水や行動食は十分持っていきましょう。※中の茶屋は、2018年は4/23から11/26まで営業しているとのこと。

坂道ダッシュは筋トレ要素が強いです。トレーニング後、プロテインを摂取すると、効果的に筋肉をつけられます。

五合目コース 当日の戦略

五合目コースは、山頂コースがスタートした1時間半後の8:30にスタートです。トイレは空いてます。慌てずゆっくり準備しましょう。

2時間以内のゴールを目指すなら、馬返しを1時間5分以内、その手前の「中の茶屋(7.2km)」を40分以内の通過が目安です。

馬返し以降のトレイルに入れば、歩く区間で休めます。よって、馬返しまでは、苦しくても、スピードを上げていきましょう。

2.5合目くらいで足が攣る方が多いようですが、心配ありません。泣いても笑ってもあと30分。足を騙し通して、走り抜きましょう。

給水所は、3km地点の浅間神社、中の茶屋、馬返し、2.5合目にあるので、水を背負っていく必要はありません。逆に負荷となります。補給もジェルを1本馬返しか2.5合目で摂取すれば十分だと思います。無しでもOK。

五合目までなので、とにかく全力で最後まで出し切りましょう。タイムによって、翌年の山頂コースの戦略が変わってきます。

【参考】

五合目コースを2時間20分以内で完走できたら

五合目コースを2時間20分以内で完走して山頂レースの権利を獲得したら、来年の準備を始めましょう。

2時間以内の方
怪我なく順調に練習すれば、かなり高い確率で来年は山頂ゴールできます。

2時間以上かかってしまった方
残念ですが、現状では山頂ゴールは難しいです。なぜなら、山頂コースでは五合目より上を走るパワーを残す必要があるからです。

五合目コースを2時間ジャストの方でも、山頂コースの時は、2時間5分〜10分かかることになります。更にそのタイム帯はランナーが多いため、渋滞が発生し、更にタイムが遅くなる可能性があります。

とはいえ、まだ1年あります。徹底的に登坂能力を鍛えて、五合目コースを余力を持って2時間以内で走れるようにしておきましょう。

山頂コース

山頂コース練習方法

基本的に、五合目コースと練習方法は同じです。急坂のダッシュで馬返しまでのロードを鍛え、それ以上では石段や階段のダッシュが有効です。

注意して欲しいのは、五合目以上では、滑りやすい砂礫や、岩場もあるということ。これらに関しては、一度試走をして、実際に体験するのが一番です。

五合目コースの試走の際に、ついでに頂上までの試走も行ってしまいましょう。また8月もチャンスです。五合目コースを完走したら、8月の夏休みや休日を利用して、山頂まで試走しておきましょう。

岩場や石段の様子を知ることができれば、1年間何を練習したらよいか、イメージしやすくなります。

石段は足だけでなく、腕も使います。腕立てふせなどで、腕力も鍛えておくと良いでしょう。

ビルの階段を4-5kg背負って、ひたすら登る練習は有効です。下りは危ないので、エレベーターで。

レース前になったら、可能であれば、レース10日前くらいまでに、一度試走をしておくことをおすすめします。パワー配分もつかめますし、高度順応で高山病になりにくくなります。

富士山の山頂の雪が溶けるのは、6月末くらいです。

【参考】
山頂コース試走レポート 富士登山競走

山頂コース 当日の戦略

スタートまで

スタート1時間前くらいには現地に到着しておきましょう。トイレが混みます。

スタートは7:00。スタート整列は30分前です。みんな焦って、なるべく前に陣取ろうとします。

前述の通り、スタート位置は大きな差にはなりません。走力で決まります。

とはいえ、なるべく前に陣取ったほうが有利なのは確か。トイレや準備を済ませて、30分前には整列しましょう。

馬返しまでが勝負

山頂コースは、馬返しまでが勝負です。

できる限りスピードアップして、馬返しを1時間3分、五合目を2時間4分以内を目指します。

これ以降だと、渋滞に巻き込まれる可能性が高くなります。

馬返し〜五合目のトレイルは、五合目コースよりもランナーが多いです。隙あらば、どんどん前のランナーを抜かしていきましょう。ぼーっとして、遅いランナーに着いてしまうと、ペースが落ちます。

目標通過タイム

山頂コース4時間半以内で完走するために、各ポイントの目標通過タイムは

0:15 北口本宮冨士浅間神社給水所
0:40 中茶屋給水所
1:05 馬返給水所
1:28 二合五勺給水所
2:00 五合目給水所
2:15 六合目給水所(安全指導センター)
2:40 七合目給水所(花小屋)
3:15 八合目給水所(太子館)
3:28 八合目給水所(白雲荘)
3:50 八合目関門(富士屋ホテル)
4:00 八合五勺給水所(御来光館)
4:15 九合鳥居

補給計画

2.5合目と五合目のエイドに、バナナがあります。各々で2-3切れ食べておきましょう。

五合目から上はスタミナ勝負です。

ちなみに、食料があるエイドは、2.5合目と5合目のバナナのみ。六合目でスポンサーがジェルを配っていることがあります。

七合目より上にはバナナは、無いので、ジェルを2-3本持っていって、30分おきくらいに摂取することをお勧めします。

装備

ウェアはフルマラソンを走る時と同じで良いと思います。シューズはロード用で十分です。

ただし、下山道で靴がボロボロになってしまうので。お古をお勧めします。

山頂付近は10℃以下に下がるため、汗が一気に冷えます。シャツの下にfinetrackのドライレイヤーを着たり、ゼッケンと一緒に送られてくるビニール製のポンチョを持っていきましょう。

お金はトイレ用の小銭を400円と、ペットボトルを買う500円玉、頂上で食事ができる分くらいのお札を。

ウエストポーチは、ペットボトルが刺さるタイプが良いようです。途中の山小屋で購入して、そのまま持って登れるので。

下山道はホコリまみれになるので、マスクがあると安心です。ハードコンタクトレンズの方は、ゴーグルの代わりになるグラスも必須です。

馬返し〜八合目

五合目までのトレイルで、多少足が攣っても心配ありません。五合目より上は、砂礫、石段、岩場と使う筋肉が変わってくるため、足の攣りは収まってきます。とはいえ、最後の最後では、攣ってしまうこともありますが。

五合目の関門を過ぎると、六合目までは細いシングルトラック。追い抜きできる箇所が少ないため、焦らず前について一息つきましょう。

六合目から、つづら折りの砂礫道。天気が良くて乾燥していると、滑って歩きにくいです。少しでも踏み固められているルートを見つけて、焦らず登りましょう。

20回以上のつづら折りをクリアすると、七合目の花小屋へ到着。給水を受けられます。

ここから八合目の入り口まで、急な岩場が続きます。四つん這いになって登る感じになるため、楽に感じます。

七合目の岩場までは、多くのランナーが順調に登れるでしょう。

八合目からが本当の勝負

しかし要注意。ここで頑張りすぎると、八合目でパッタリと足が止まります。

なぜなら、八合目の太子館をすぎると、再び砂礫道に戻るからです。岩場で全身が疲労したところで、斜度がきつくなった砂礫が待ち構えてます。多くのランナーが、ここで足が止まるようです。

しかし、ここでくじけてはいけません。4時間以内に八合目関門を通過しないと、完走できません。ジェルを補給して、スタミナ切れだけは避けましょう。

砂礫道は、なるべくハムストリングやお尻の筋肉を意識して確実に登りましょう。腰に手を添えたり、腿の筋肉を手で押したり、色々試してみましょう。

富士山ホテルの前が、八合目関門(標高3,400m)です。太子館から標高差300m。一番つらい区間を乗り切れば、後はゴールまで登るだけ。残り376m。

この先もキツイ砂礫が続きますが、体がゴールを意識し始めてくるので、気力で登れます。

ゴール手前には岩場があります。ここで再び手足で進めるようになるので、楽になって安心感が生まれます。

ただし、場所は山頂直下。一般の登山客も余裕がありません。岩場で大渋滞することも。予断は許さないです。

石段が現れれば、ゴールまではあとわずか。全力を出し切りましょう。

【参考】
第71回富士登山競走山頂コース 日本一過酷な山岳レース 完走しました!2018年7月

山頂コース完走が難しくなっている

2018年の71回大会は、完走率が43%と、例年の50%より低くなりました。

原因としては、

  • 好天が続いたことにより、砂礫道が乾燥して登りにくかった
  • 外国人観光客の増加による渋滞
  • 五合目関門位置の変更による、距離アップ(+200m、キロ6分で1分12秒)

などが言われています。特に、五合目関門の位置変更は、渋滞は緩和されましたが、単純に距離が伸びているので、完走ギリギリのランナーは、注意が必要です。

フルマラソンをサブスリーで走れる健脚のランナーでも、完走できないこともあります。富士登山競走は、上りのロードや山道での、登りに特化したトレーニングが不可欠です。

登坂能力を向上して、次回に向けて万全を期しましょう。

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